「ロイド?」
降りるのは沈黙
「うそ だよね」
正面を見ているはずのその瞳は
何も 映してはいなかった
「ロイド っ」
そう コレットさえも
「
ロイド!」
Oh Dear,
please tell me this is a dream
何度呼んだだろう
かつて
自分が完全に天使化し
心を失ったときも
こうだったんだろうか
虚空を見つめる天使は
血の付いた双剣を握ったまま
動かない
何故?
「ロイド・・・ッ」
彼はマナの血族でも
信託を受けた訳でもないのに
零れそうになる涙
けれどもそれを
ぐっとこらえて
まず先に
伝えなきゃ と
みんなのところまで戻って
何とかしなきゃと
考え始めたとき
「 ・・・コレッ ト ?」
ふわりと肩に触れる 優しい手
はっと顔を上げれば
心配そうに見つめる彼
いつもの 鳶色の 光
「ロイド… 」
ふと 頬を伝う
「よかった・・・ っ」
涙
とまらない
「なんか よくわからないけど
ごめんな… ?」
心配かけて
「そんなの いいよぉ・・・」
よかった
ホントに よかった…
涙を流すコレットの肩に手を置いて
彼女が泣き止むのを待つ
光に照らされて涙を流すコレットが
とても綺麗だ
今までのことを
すべて忘れるくらいに
「そうだ 魔物は!?」
その言葉に
コレットが固まったのに気付かず
今までのことを思い返す
闇の神殿で
魔物が現れて
コレットをかばって
それから
それ から・・・?
記憶が 抜けてる
その後にあったことが
思い出せない
「それに」
どうしてコレットが見える?
ここは
まだ闇の神殿の中のはずだ
灯りも役に立たない
この暗闇の中で
コレットの向こうにのびる
影
振り返るのが
怖い
「どうして
こんなに明るいんだ…?」
自分の後ろで
なにがひかってる
?
ゆっくりと
振り返った先に見たものは
己が背から生える
空の蒼を写し取ったような
翼
カランカラン
硬質の地面に落ちた
双剣の乾いた音が 響く
「なん で 」
一歩
後退しようとして
翼を動かさなければならないのに
気が付いてそこで
自分の身体が浮かんでいることに
今更 気が付いた
「 っ・・・ ! 」
「ロイド?」
「うそだ …」
声が ふるえる
「こんな
これじゃ まるで・・・!」
頭の中がぐるぐると混乱する
頭を抱えて
誰か
これは夢だと 言ってくれ !
彼に反応するように
翼が 光る
瞳が 再び碧に染まる
「
ロイド!!」
蒼と対になって輝く
薄紅色の羽
ふるえる羽は
蒼のそれより
ずっと弱い光だったけれど
飛びかかった意識を呼び戻すには
十分だった
「・・・ごめんね?」
ロイドにしがみついたまま
コレットが言う
「 …なんで
おまえがそんなこと言うんだよ」
手探るように
彼女の体に腕をまわす
コレットは
彼にしがみつく手に
さらに力を入れて
「ごめんね でも 言わせて…?」
同じく
天使と化した事のある者として
気付いてしまった
「ごめんね」
彼もまた その過程で
感覚を失っていることに