時々 さ
味が分からなかったり
眠れないなっていう日は
あったんだ
ぽつりと
しばらく経ってから
ロイドは語り始めた
たまに だったし
次の日には
何ともなかったから 俺
ちっとも気付かなかった
ばかだよな 俺
そう言って
はははと乾いた声で笑うのが
とても綺麗なのに何故か
とても痛々しいと
コレットは思う
天使に近づいていくおまえを
ずっと見てきたのに
羽が現れてから
気が付くなんてなぁ…
そうやって話すロイドの背には
未だに
蒼い翼が輝いていた
Please !
Don’t take his smile out from him
「羽 しまえないなぁ」
自分の肩に手を置いて
背にある翼を見る
蒼翼は
自分の意志で動かすことはできるのだが
今のところそれ以上のことはできない
「このまま戻るのは
やっぱまずいよなぁ…」
感覚は少しずつ
戻ってきてはいるけれど
この翼を隠すことができなければ
意味がない
何かいい方法はないかと
考えていると
「ねぇ、ロイド」
「ん?」
ためらいがちなコレットの声
「
明日
メルトキオに行くの
止めない?」
「なに言ってるんだコレット!
そんな
」
「でも このままじゃ!
ロイド、天使になっちゃうんだよ!?
前のプレセアや、私みたいに
心を無くしちゃうんだよ!?
さっきだって
ほんの少しの間だったけどロイド
完全に天使になってた
すぐに 元に戻ったけど
わたし っ
いやだよ
ロイドがまた
あんな風になっちゃったら…!」
「コレット…」
「だから
このことをみんなにも話して
明日はアルテスタさんか
ダイクおじさんのところに
」
「
コレット!」
「
っ 」
「だめだよ
そんなこと言っちゃ」
「でも」
「
今は契約が先だ
ここまで来たんだ
最後までやり抜かなきゃ
ちょっとでも早く
クルシスから世界を解放して
おまえやマーブルさんみたいに
誰かを犠牲にしなくてもいい
世界にしなきゃな」
「でも、ロイド…」
「俺のことは大丈夫
これまでだってそうだったんだ
明日の朝までには
すっかり元に戻ってるって!」
だから
「みんなには
言わないでくれないか コレット」
「
どうして!」
「さっきも言っただろ
本当に時々 あるかないかだったんだ
今回みたいに
全部いっぺんに来たのは
そりゃあ初めてだったけど
でもさ
ほら感覚も戻ってきてるし
すぐ元に戻るからさ」
な?
きっと
要の紋の不具合だったんだよ
全部おわったら、
親父に直してもらうからさ
そうやって綺麗に
本当に綺麗に笑った
どうしてこんな風に
綺麗に笑えるんだろう
昔から
ロイドのこの笑顔が大好きで
辛いこととか
不安なこととか
たくさんあっても
ロイドの笑顔があるだけで
何があっても
大丈夫な気がして
それが無くなるかもしれないと思うと
怖くてたまらないのに
それでも
ロイドは笑って言ってくれる
大丈夫だからって
そう言ってくれるから
安心 できる
頷くことが できる
でもね・・・
今度だけは
願わずにいられないよ
どうか
この想いが届くなら
彼から
あのまぶしくて
優しくて
大好きな笑顔を
取り上げないでください