「どうしたんだ こんな遅くに?」
「うん、ちょっと寒くって
起きちゃったんだ」
「そういえば
ここって一応崖の上 だもんな・・・
寒い… か 」
「うん
ちょっと 寒いよね?」
「あ ああ… そうだな 」
「それにロイドだって
こんなところでどうしたの?」
「俺も 目が冴えちまってさ
散歩してたんだ」
「でも 神殿の中真っ暗で危ないよ
私でもほんの少ししか見えないのに・・・」
「 ・・・あのさ、コレット
俺・・・ !?
さがれ、 コレット!」
「!?」
ロイドにさがれと
言われて見たものは
暗闇で光る
ふたつの紅い
魔物の 目
「
逃げろ!コレット!」
剣を引き抜く音
魔物の唸り声
それから
ドンッ
すぐそばで
何かが突き飛ばされる音と
ガッ
遠くの壁に
何かがぶつかる音
低くうめく声が聴こえた
「
ロイド!?」
叫んだ声に反応して
魔物の唸り声が再び聴こえる
さっきより近い
逃げなきゃ
相手はこの闇の神殿に生息する魔物
明らかに不利だ
ここは入り口からそんなに
歩いて来ていないはずだから
羽を広げて一度空中へ逃げて
そのまま月明かりを目指せばいい
外はまだ夜でも
この神殿の中よりは
まだ明るい
でも
それだとロイドを置いて行く事に
なってしまう…!
一瞬のためらい
けれど
襲いかかるには十分すぎる時間
地を蹴る音と魔物の咆哮が
一度に聴こえた
「 ……ッ!!」
声にならない悲鳴をあげて
その場にしゃがみ込んでしまう
これまでの旅から
それは死を意味する事を
嫌でも分かっていたというのに
だけど
いつまで経っても
魔物の爪は飛んで来ない
その代わりに聴こえた
風を切る羽音
おそるおそる目を開けた
そこに見えたのは
闇にあって鮮やかに映える
空のような 蒼
「クラトス さん?」
その蒼は応えない
いやそもそも
これは彼の色じゃない
似ているが 違う
それに
蒼のムコウの
あの赤は・・・
「ロイド・・・?」
ふるえる声でその名を呼べば
振り返るその瞳は
優しい鳶色ではなく
彼の エクスフィアの色
「うそ・・・」
碧いその色は
何も映すことなく
名を呼んだコレットを
ただ 見つめていた
Angel with azure wings