蒼翼の天使 05, Angel with azure wings

「どうしたんだ こんな遅くに?」


「うん、ちょっと寒くって
起きちゃったんだ」


「そういえば
ここって一応崖の上 だもんな・・・

   寒い… か 」


「うん 
ちょっと 寒いよね?」


「あ ああ…  そうだな 」


「それにロイドだって
こんなところでどうしたの?」


「俺も 目が冴えちまってさ
散歩してたんだ」


「でも 神殿の中真っ暗で危ないよ
私でもほんの少ししか見えないのに・・・」


「 ・・・あのさ、コレット
 俺・・・ !?

さがれ、 コレット!」


「!?」

ロイドにさがれと
言われて見たものは

暗闇で光る
ふたつの紅い


魔物の 目

「逃げろ!コレット!」


剣を引き抜く音

魔物の唸り声


それから

ドンッ


すぐそばで
何かが突き飛ばされる音と

ガッ

遠くの壁に
何かがぶつかる音

低くうめく声が聴こえた

「ロイド!?」

叫んだ声に反応して
魔物の唸り声が再び聴こえる


さっきより近い

逃げなきゃ

相手はこの闇の神殿に生息する魔物

明らかに不利だ

ここは入り口からそんなに
歩いて来ていないはずだから

羽を広げて一度空中へ逃げて
そのまま月明かりを目指せばいい

外はまだ夜でも

この神殿の中よりは
まだ明るい

でも

それだとロイドを置いて行く事に
なってしまう…!

一瞬のためらい

けれど
襲いかかるには十分すぎる時間

地を蹴る音と魔物の咆哮が
一度に聴こえた


「  ……ッ!!」

声にならない悲鳴をあげて
その場にしゃがみ込んでしまう

これまでの旅から
それは死を意味する事を
嫌でも分かっていたというのに

だけど

いつまで経っても
魔物の爪は飛んで来ない

その代わりに聴こえた

風を切る羽音

おそるおそる目を開けた

そこに見えたのは


闇にあって鮮やかに映える

空のような 蒼

「クラトス さん?」

その蒼は応えない

いやそもそも
これは彼の色じゃない

似ているが 違う

それに

蒼のムコウの
あの赤は・・・

「ロイド・・・?」

ふるえる声でその名を呼べば

振り返るその瞳は
優しい鳶色ではなく

彼の エクスフィアの色

「うそ・・・」

碧いその色は
何も映すことなく


名を呼んだコレットを
ただ 見つめていた

Angel with azure wings


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