「
ロイド!ルーク!2人とも、合図したら一気に攻撃!」
一匹、切り伏せながら、リンクが叫んだ。
「合図したらってオマエ、あいつあんな高いところにいるんダぞ!」
こっちの攻撃なんて届くワケがない。
そう突っかかったのはミド。
「目が弱点なのは分かってるんだ
だから」
腰のベルトに挟んだままのパチンコを軽く叩く。
「こいつで目を射てば、落っこちて来るかもしれないだろ!?」
「
よっしゃあ!ザコは任せろ!」
どかっと一匹を掌に集めた赤い光で吹き飛ばしたルークが、
「
じっくり狙えよ!リンク!」
同じく上下に描いた軌跡でざくっと斬り伏せたロイドが、それぞれ応える。
リンクを背にして、この先は行かせまいと剣を、技を振るう。
その後ろでリンクは、ぐいっとパチンコのゴムを引き延ばし、構えた。
その先には、天井に張り付き、幼生の卵を産んでは移動を繰り返すゴーマがいる。
今まで狙ったことがあるものとは、比べ物にならないほど、遠い。
不気味に浮かぶ的が、天井を忙しなく動き回る。
灯りは傍らの妖精と、的でもあるゴーマの赤い目玉のみ。
その目玉は、真下で戦うロイドとルークの上をうろうろしている。
2人が幼生体を斬り伏せると、卵を産んでまた増やす。その繰り返し。
リンクの方は見向きもしていないようだ。卵を産むことだけ、回復する時間を稼ぐことだけを考えているんだろう。
それだけ2人は強い。
戦いなんかしたことが無いリンクにだって、それがわかるくらいに。
それでも外せば、あの目はこちらを向くだろう。自分が狙われていることを知って。
だから
絶対に当てなきゃならない。
当たるだろうか。
手がふるえる。
周りの音が遠くなる。
「
リンク!危ない!」
ナビィの声に、はっと我に帰る。
ふいに幼生体が一匹、リンクの目の前に下りて来た。成体のように目を真っ赤に染め、硬質のトサカをリンクに向ける。
今にも襲いかかって来そうな体勢で
剣に持ち替えるには、遅すぎ・・・
「
うわあああああ!!!!」
ごっ
鈍い音がして、幼生ゴーマが倒れた。
辺りに石の破片が散らばる。
ぽかんとそれを見ていたリンクに、
「
何やってんだ!」
息を切らせて、ミドが叱咤する。
「
とっとと射てよ、このノロマ!」
それを見て思わず薄く、笑みがこぼれた。
嘘みたいに震えが止まる。
キッと前を見据えて、卵を産むために一旦停止したゴーマのその、まるく見開いた目玉に向けて
「
くらえ!」
パシュッ!
戦闘の最中にあって、ゴムがしなる音が響く。
それはまっすぐにねらった先へ
ゴーマの目玉へ飛んで行った。
ゲギャッッ!?
不意の衝撃に、天井から手を離したゴーマ。
文字通り真っ逆さまに墜落していく !
「
今だ!」
リンクが叫ぶ。
どさっと砂埃を巻き上げ地に落とされたゴーマ。
なんとかその場を離れようと、もつれる足を必死に動かす。
砂塵で周りが見えない
そこに
左右から風を切って現れた2つの影
ロイドとルークが各々の剣を構え、
互いに交差するように、飛ぶように鋭い、突きの挟撃を放つ
残る十字の軌跡。
地下洞に響くゴーマの絶叫。
ばたばたと倒れて行く、幼生達。
ゴーマは、しばらくのたうちまわった後、力尽きた。
禍々しい紫の炎をまとって・・・