とっさに放った一撃。遠くへ吹き飛ばすだけだと思っていたが。
ゲギャ!?
幼生体が悲鳴を上げて吹き飛んだ。ばたりと地面に倒れ、塵と化す。
「なっ!?」
考える間もなく、次の一体が襲ってくる。攻撃をかわし、もう一撃
阻まれた。
幼生体はぶるりと身体を震わせ、キッとリンクを睨みつける。今度は効いていないようだ。
いったい何が?
ちらりとロイドとルークの方を見る。
ふたりとも、幼生体の攻撃の合間を縫ってゴーマ本体の方へ斬り掛かっている。
だが、ゴーマは目を閉じ、攻撃をかわす。最初のを含め、攻撃が効いている様子はない。
じゃあなんで?
リンクは飛びかかって来る幼生体を、じっくり見すえた。
幼生体は、トサカをリンクに向け、狙いを定めると、その目を血よりも赤く染めて、飛びかかって来る。
振り払おうと剣を振る。幼生体は目をつむってリンクの剣を防いだ。
ふと、攻撃の動作で気になることがあった。
確かめてみよう。
じっとりと、剣を握る手に汗をかいた。
これでダメだったら、どうしようもない。
でも
何もできないよりマシだ。
再び攻撃態勢に入る幼生体。リンクは、幼生体が飛びかかってくるそのギリギリまで引きつけて。
避けるでなく、防ぐでもなく。
赤く見開いたその目玉を狙って思い切って剣を振った。
目玉を斬られた幼生体は、さっきと同じように吹き飛び、倒れる。
幼生体に攻撃が効いた!
もしかして
「
ルーク!ロイド!ゴーマの目玉を攻撃してみてくれ!」
この考えが正しければ、何とかなるかもしれない。
「
こうか!?」
ゴーマの近くにいたルークが幼生体の群のスキをついて攻撃する。
幼生体を踏み台に高くジャンプし、そのまま急降下してゴーマの目の前に着地。
その場で回転斬り。そしてふわりと浮く巨体を目玉ごと突き上げた。
宙に浮いたことで踏ん張ることも出来なかった巨体は、そのまま壁に叩き付けられる。
ギギギ、と声をあげながら踏ん張った足は立ち上がろうとしてしかし、もつれた。
やっぱりそうだ
だからいつもこっちの攻撃を防ぐとき、目をつぶってたんだ!
狙いが当たった。
「こいつら、弱点があるんだ」リンクが言った。
「ちっこい奴らも同じ
こいつらの弱点は、目だ!」
目を狙え!
リンクの声に、ルークがスキをついて斬りつける。次々と倒れる幼生体。
剣が効くとわかれば、こっちのモノだ!
「やってやる
ッとと!?」
調子づいたルークを遮るように、大量の幼生体がルークを囲む。その隙に移動するゴーマ。
ゴーマへの攻撃を脅威に思ったのだろう。ほとんどの幼生体がルークを取り囲んでしまった。
もうひとりの剣豪から目を放して
文字通り風を切り、円を描いて宙を舞う赤と蒼の刃。
彼はザッと地面に着地すると、一気にゴーマへと肉薄した。
「
くらえ!」
鬣<たてがみ>を持つ獣の頭の形をした気迫みたいなものが、ロイドが振り切った剣から発せられ、再びゴーマが吹き飛んだ。
ぱらぱらと崩れる壁。
戦場が一瞬凍り付く。
「どうした?
来いよ」
切っ先をヒュッとゴーマの方へ振り下ろし、二本の剣を構える。
ルークに気をとられて、ゴーマたちはロイドから目をそらしてしまったのだ。そのチャンスを見逃すロイドではない。
ボボボボッ
ハッとゴーマが目を向ける。幼生体に囲ませたハズのルークが、地面から剣を引き抜きこちらを見据えていた。
周りの幼生体が、目を見張り後ずさる。
「なめんなよ、この目玉」
目を放してはいけない剣豪。
それは、ルークも同じだった。
「
その目だけは自慢の鎧も意味ねぇみてーだな?」
ふてぶてしく、傲慢に言い放つ。
左右を振り仰ぐゴーマ。視線の先はふたりの剣豪。
ゴーーー!!
見を奮い立たせるようにブルブルと震え、再び立ち上がるゴーマ。
構え、攻撃に備えるふたり。
しかしゴーマはふたりへ向かって行くでなく。身体をガチガチ鳴らして方向転換。そして洞窟の壁を登り始めた。
「あ、こいつ、逃げるな!!」
ルークが駆け込む。わらわらと残りの幼生体がルークの行く手を遮った。
ゴーマはその間にまんまと洞窟の天井まで登り、天井を地面でも歩くかのようにカサカサと動き回り出した。
ジャンプしても届かない位置。
『敵』の攻撃に邪魔されない位置だ。
天井の真中まで来たゴーマは、袋状になった尾をこちらへ向け、目を真っ赤にした。すぐにその尾からまるいものが降って来た。
それは地面に落ちると半分に割れる
中から、幼生ゴーマが姿を現した。
「マジかよ!」
そう言っている間にも、次々と卵を産むゴーマ。
その卵から孵る幼生体の群。
あっという間に囲まれた。
「・・・ッ この!」
タイミングを計り、襲い来る幼生体を剣で斬り伏せる。弱点を確実に狙って。一匹ずつ倒していくリンク。
ロイドやルークにはほど遠いけれど、
オレだって戦える。
でも
「…ッ きりがない!」
幼生体は、ゴーマ本体から無尽蔵に産み出せるようだった。しかし彼らが倒したそばからまた新たな幼生体が産み出され、
増えてしまう。今はまだいい。けれど、このままこれが続けば、疲労もたまるだろう。
やっぱり本体をどうにかしないとだめだ
「ヤロォ…!降りて来い!」
ルークが叫ぶ。
叫びたいのはリンクも同じだった。
せっかく弱点が分かったのに・・・
こんなので足止めされたら
デクの樹サマの姿が目の前をよぎる。翠が溢れる森の、どっしりとした、あのやさしい森の精霊の
闇に包まれ若葉さえ落としだした姿。
あの目玉・・・ッ!!
一匹斬り伏せ、身から沸き立つ全ての想いを込め、ギッと天井を睨みつ
一瞬、その目玉がよろめいた。
「!?」
何だ・・・?
再び見上げる前に、襲いかかって来たものを斬って、一端退いた。
そうして改めて見上げる。そして
落ちまいと天井を掴み体勢を立て直さんとするゴーマを、確かに見た。
そうか
その瞬間リンクの隙を狙って襲いかかって来た幼生ゴーマ。
が、横からの衝撃波で薙ぎ飛ばされる。
「
大丈夫か!」
ルークだった。
お礼を言うヒマもなく、群がって来た幼生体を倒しに向こうへ行ってしまった。
そうする間に別の一匹がリンクを襲う。
それを斬り伏せ、考える。
そうか、今までのダメージは確実にあいつにたまってるんだ
あんなに高い天井に、あっという間によじ登るのを見せつけられたけど、
もうあんなところにいるのも精一杯だったら?
そんなギリギリの状態の奴の、あのにっくき目玉をパチンコで射てたら
奴はどうなる
決まってる