2 妖精と即興楽曲<トッカータ> - 7,スクウモノ<後編>

とっさに放った一撃。遠くへ吹き飛ばすだけだと思っていたが。


ゲギャ!?


幼生体が悲鳴を上げて吹き飛んだ。ばたりと地面に倒れ、塵と化す。

「なっ!?」

考える間もなく、次の一体が襲ってくる。攻撃をかわし、もう一撃     阻まれた。 幼生体はぶるりと身体を震わせ、キッとリンクを睨みつける。今度は効いていないようだ。


いったい何が?


ちらりとロイドとルークの方を見る。

ふたりとも、幼生体の攻撃の合間を縫ってゴーマ本体の方へ斬り掛かっている。 だが、ゴーマは目を閉じ、攻撃をかわす。最初のを含め、攻撃が効いている様子はない。


じゃあなんで?


リンクは飛びかかって来る幼生体を、じっくり見すえた。

幼生体は、トサカをリンクに向け、狙いを定めると、その目を血よりも赤く染めて、飛びかかって来る。 振り払おうと剣を振る。幼生体は目をつむってリンクの剣を防いだ。


ふと、攻撃の動作で気になることがあった。


確かめてみよう。


じっとりと、剣を握る手に汗をかいた。


これでダメだったら、どうしようもない。

でも

何もできないよりマシだ。

再び攻撃態勢に入る幼生体。リンクは、幼生体が飛びかかってくるそのギリギリまで引きつけて。 避けるでなく、防ぐでもなく。

赤く見開いたその目玉を狙って思い切って剣を振った。

目玉を斬られた幼生体は、さっきと同じように吹き飛び、倒れる。

幼生体に攻撃が効いた!


もしかして     

「ルーク!ロイド!ゴーマの目玉を攻撃してみてくれ!」


この考えが正しければ、何とかなるかもしれない。


「こうか!?」


ゴーマの近くにいたルークが幼生体の群のスキをついて攻撃する。

幼生体を踏み台に高くジャンプし、そのまま急降下してゴーマの目の前に着地。 その場で回転斬り。そしてふわりと浮く巨体を目玉ごと突き上げた。

宙に浮いたことで踏ん張ることも出来なかった巨体は、そのまま壁に叩き付けられる。 ギギギ、と声をあげながら踏ん張った足は立ち上がろうとしてしかし、もつれた。


やっぱりそうだ

だからいつもこっちの攻撃を防ぐとき、目をつぶってたんだ!


狙いが当たった。


「こいつら、弱点があるんだ」リンクが言った。

「ちっこい奴らも同じ     こいつらの弱点は、目だ!」


目を狙え!


リンクの声に、ルークがスキをついて斬りつける。次々と倒れる幼生体。

剣が効くとわかれば、こっちのモノだ!


「やってやる     ッとと!?」

調子づいたルークを遮るように、大量の幼生体がルークを囲む。その隙に移動するゴーマ。

ゴーマへの攻撃を脅威に思ったのだろう。ほとんどの幼生体がルークを取り囲んでしまった。

もうひとりの剣豪から目を放して     

文字通り風を切り、円を描いて宙を舞う赤と蒼の刃。

彼はザッと地面に着地すると、一気にゴーマへと肉薄した。


「くらえ!」


鬣<たてがみ>を持つ獣の頭の形をした気迫みたいなものが、ロイドが振り切った剣から発せられ、再びゴーマが吹き飛んだ。

ぱらぱらと崩れる壁。


戦場が一瞬凍り付く。

「どうした?     来いよ」


切っ先をヒュッとゴーマの方へ振り下ろし、二本の剣を構える。

ルークに気をとられて、ゴーマたちはロイドから目をそらしてしまったのだ。そのチャンスを見逃すロイドではない。


ボボボボッ


ハッとゴーマが目を向ける。幼生体に囲ませたハズのルークが、地面から剣を引き抜きこちらを見据えていた。 周りの幼生体が、目を見張り後ずさる。


「なめんなよ、この目玉」


目を放してはいけない剣豪。

それは、ルークも同じだった。


「その目だけは自慢の鎧も意味ねぇみてーだな?」


ふてぶてしく、傲慢に言い放つ。

左右を振り仰ぐゴーマ。視線の先はふたりの剣豪。


ゴーーー!!


見を奮い立たせるようにブルブルと震え、再び立ち上がるゴーマ。

構え、攻撃に備えるふたり。


しかしゴーマはふたりへ向かって行くでなく。身体をガチガチ鳴らして方向転換。そして洞窟の壁を登り始めた。


「あ、こいつ、逃げるな!!」

ルークが駆け込む。わらわらと残りの幼生体がルークの行く手を遮った。

ゴーマはその間にまんまと洞窟の天井まで登り、天井を地面でも歩くかのようにカサカサと動き回り出した。


ジャンプしても届かない位置。

『敵』の攻撃に邪魔されない位置だ。


天井の真中まで来たゴーマは、袋状になった尾をこちらへ向け、目を真っ赤にした。すぐにその尾からまるいものが降って来た。

それは地面に落ちると半分に割れる     中から、幼生ゴーマが姿を現した。

「マジかよ!」


そう言っている間にも、次々と卵を産むゴーマ。

その卵から孵る幼生体の群。

あっという間に囲まれた。

「・・・ッ この!」

タイミングを計り、襲い来る幼生体を剣で斬り伏せる。弱点を確実に狙って。一匹ずつ倒していくリンク。

ロイドやルークにはほど遠いけれど、オレだって戦える。

でも

「…ッ きりがない!」


幼生体は、ゴーマ本体から無尽蔵に産み出せるようだった。しかし彼らが倒したそばからまた新たな幼生体が産み出され、 増えてしまう。今はまだいい。けれど、このままこれが続けば、疲労もたまるだろう。


やっぱり本体をどうにかしないとだめだ

「ヤロォ…!降りて来い!」

ルークが叫ぶ。

叫びたいのはリンクも同じだった。

せっかく弱点が分かったのに・・・


こんなので足止めされたら      デクの樹サマの姿が目の前をよぎる。翠が溢れる森の、どっしりとした、あのやさしい森の精霊の      闇に包まれ若葉さえ落としだした姿。


     あの目玉・・・ッ!!


一匹斬り伏せ、身から沸き立つ全ての想いを込め、ギッと天井を睨みつ     

一瞬、その目玉がよろめいた。

「!?」


何だ・・・?


再び見上げる前に、襲いかかって来たものを斬って、一端退いた。


そうして改めて見上げる。そして

落ちまいと天井を掴み体勢を立て直さんとするゴーマを、確かに見た。

     そうか

その瞬間リンクの隙を狙って襲いかかって来た幼生ゴーマ。


が、横からの衝撃波で薙ぎ飛ばされる。

「大丈夫か!」

ルークだった。

お礼を言うヒマもなく、群がって来た幼生体を倒しに向こうへ行ってしまった。

そうする間に別の一匹がリンクを襲う。


それを斬り伏せ、考える。

そうか、今までのダメージは確実にあいつにたまってるんだ

あんなに高い天井に、あっという間によじ登るのを見せつけられたけど、

もうあんなところにいるのも精一杯だったら?

そんなギリギリの状態の奴の、あのにっくき目玉をパチンコで射てたら

奴はどうなる

決まってる


ゼル伝は弱点を突く戦い方をすることが多いです。

特にボスとかはそこを突かないと剣が効かない。
このゴーマ然り     本気で目玉以外は剣が効きません。

ロイドもルークもそう言う戦闘の仕方ってして来なかったかなぁと思ったのでこういう表現になってます。
でも弱点さえ分かればふたりともクリア後のレベルなんでスキをつくなんて楽勝だろうと思ったんで、 なんやかんやで強いです。

リンクはこのレベル差を縮めることが出来るのか・・・!?
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