2 妖精と即興楽曲<トッカータ> - 3,異変

辿り着いた広場。異変は既に起きていた。


青々とした木の葉が宙を舞う。

見ただけでもまだ若葉と思えるようなものまで。

地に広がる巨大な根にはひびが入り、今にも枯れてしまいそうだ。

あまりの光景に、四人と二匹は息をのんだ。


「「デクの樹サマ!!」」


その光景を見るや否や、飛び出したリンクとミド。

さわるだけでぼろぼろと崩れる表皮に、思わず後ずさる。

「なんだよこれ…!どういう事だよ!」

「デクの樹サマ、何があったの?デクの樹サマ!!」

ついさっき、「またあしたの」って言って別れたばかりじゃないか。笑うたびに大きな枝をゆらして、愉しそうに・・・

それなのに・・・     


「おい!これは     !」

ロイドの声にはっと目を向けて     声を、失った。


デクの樹サマの腹に、何かが食い破って行ったような大穴が開いている。

かなりの大きさだ     3mは、堅い。


「そんな・・・!」

マツリの間に控えていた場所だから覚えてる。こんな大穴、開いてなかった。いや、開いてるはずがない。

「・・・行ってみよう」

静かな声。

「ロイド!?」

「だな、まずは何がいるのか確かめてみねーと」

ルークがそれに続く。

「オマエまで何を     」

「2人はここで待ってろよ」

必ずデクの樹様をこんなにした元凶を倒して帰ってくるからさ。

左右に下げた得物を確かめ、ロイドがコキリ組に言った。

「待って!オレも行く!」

「リンク!?」

一歩前に踏み出したリンク。ミドが信じられないといった顔でリンクを見た。

「何言ってんだ、こっから先は何がおこるかわからねーんだぞ?」

ルークが慌てた。こんな危なそうな所に、こども(今は自分たちもだが)を引き連れてなんて行けない。

「そうだ、2人はここで待っ     」


「待ってなんていられないよ!!」


リンクが叫んだ。

「デクの樹サマが苦しんでるのに、ただ待ってるなんて出来ない。 何でもいい、オレも何か力になりたいんだ     オレに出来ることを」


ロイドが前に出る。

リンクとほぼ同じ     むしろリンクの方が若干高いくらいの      目線なのに、ロイドがやけに大きく見えた。


「・・・中には、さっきみたいなモンスターが出るかもしれないぞ」

静かに切り出すロイド。

「わかってる」

「むしろ強い奴がいるかもしれない」

「うん」

「覚悟はあるか」

「ああ!」

強い、返事。

「     わかった」

緊張が解けて思わず顔がほころぶ。

「・・・じゃあ」


「ただし!」


「無茶すんなよ?」

「ああ!」


「行こう!」

ルークの声で、三人が駆け出す。

「     ッ、待てよ!おいらも行くゾ!!」

半人前の妖精なしとヨソ者にまかせてられるか!

走り出すミド。

     と、ミドの妖精が彼の肩をたたく。

「なんだヨ」と振り返ってもらったところで祭壇の方へ飛んで行き、木の板、もといデクの盾を持って来た。 盾が重くてふよふよと頼りない飛び方。やっとのことでミドのもとにたどり着く。

そうしてミドに盾を受け取ってもらうと、素早く二三回くるくるとミドの周りを飛び、先に飛んで行った。

「あ”ッ、ま、待てっ・・・!」

あわてて追いかけるミド。

暗闇の中に、続く     



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