2 妖精と即興楽曲<トッカータ> - 2,ゆずれないモノ

夜の道を、駆ける音がする。

草を踏む音。

それらに合わせて鍔鳴りの音。


音の主等はまだ子どものようだ。


それらを先導するように、小さな白いヒカリが飛んで行く。


昼は光溢れる暖かな場所だけど、今は夜の闇もあり冷たくて。


何だか、怖い。


慣れない夜道で何度かつまずきそうになりながら、リンクは最後尾を走った。

すぐ前をルーク。先頭はロイドと妖精ナビィがほぼ並んで走る。

速い

2人があちこち旅をしたという話は聞いていたけれど、聞くだけではどういう事かよく実感できなかった。

2人の背を見ながら走っていて感じる。何か漠然としたモノ。


それは何なのか分からないけれど。

デクの樹サマの広場へ続く小道に差し掛かったその時。

先を行く2人が過ぎた後で突然、土が盛り上がる。

小さな芽が見る見るうちに大きくなり、茎の先に出来た赤い葉脈の浮き出た、 ドス青いつぼみが生えたと思ったら、そのつぼみがバックリと割れた。 割れた部分から覗かせる真っ赤な舌。よだれを垂らし、口のようににたりと笑ったように見えた次には、 茎をしならせまるで獣のように歯をガチガチ鳴らして襲ってくる。

「     ッ!?」

少し2人から遅れていた為に、すんでのところで後退する事が出来たのは幸いだっただろうか。 しかしほっとしたのもつかの間、来た道を塞ぐように同じのが二本。


「リンク!」


気付いた2人と一匹が振り返った。

その声にはっと正気に返ると、剣を抜き放ち、前にいる植物のモンスターに横一閃。

茎の根元からざっくり斬られたそれは、あっけなく地に倒れた。


後ろの奴は、と振り返った時には既にロイドとルークが倒した後で、ほっと一息つく。だが     


「なんだよ今の…」


頭上から別の声がふって来た。

見上げればそこには一匹の妖精。その灯りに照らされて、木の上にミドが立っているのが見えた。

「ミド!オマエ、どうして・・・」

「マツリの後、ホーノーした盾を見ているのはおいらの役目だから」

そう言って木の上から降りて来た。

「毎年こうやって見張ってんだ。それより、今の何なんだよ!」

あんなモンスター見た事無い。

「おいら、さっきまでそこにいたんだぞ。誰か来たから脅かしてやろうと思って木の上に登ってたらこんな…ッ」

みるみる青ざめて行く。木の上に移動していなければ、襲われていたのはミドだ。無理もない。

「ここに、今みたいな魔物が出た事は、無いのか?」

ロイドがミドに問う。

ミドが首を縦に振って肯定した。


「やっぱりデクの樹サマの魔力が弱くなってるヨ」

震えるナビィの声。

「こんなところでモンスターが出るなんて、普段なら考えられない。速く、急ごう!リンク」

「待て、なんだよデクの樹サマの魔力が弱くなってるって!だめだぞ、朝までデクの樹サマの広場に入るの禁止!!」

デクの樹サマ広場へ続く道の先を塞ぐように両手を広げて、ミドが3人の前に立ちふさがる。

「一刻を争うんだ!」

ミドの両肩に手を置いて揺さぶるようにルーク。

「走りながら話すから、頼む、通してくれ!」

「たとえデクの樹サマに何かあったとしても     」

     ルークの腕をふりほどきながらミドが叫ぶ     

「     おまえらよそ者を、なおさら通す訳に行かないじゃんか!」

「今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ!」

負けじとルークも声を張り上げた。


「力を合わせて何とかしねーと

     取り返しがつかなくなってからじゃ遅いんだ!!
」


ビクッ、とミドの肩が揺れた。


「ミド、お願いだ」

そう言ったのはリンク。

睨み合うリンクとミド、そして     

「・・・ワケ、話せよな?」

数瞬の後、ようやくミドの両腕がおろされた。

ほう、とその場の空気が和らぐ。

「ああ!」

リンクが頷いた。


「急ぐぞ!」


ロイドの声。

2人になった妖精の灯りを頼りに


一行は再び夜道を駆け出した。

風もざわめく 深夜の森

闇の帳が降りてくる


はやく


はやく

急ぐ心にせかされて

生きたヒカリの 道標


十六夜の森 駆け抜けろ


闇の帳が降りぬよう

雲を斬り裂く 光となれ



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