夜の道を、駆ける音がする。
草を踏む音。
それらに合わせて鍔鳴りの音。
音の主等はまだ子どものようだ。
それらを先導するように、小さな白いヒカリが飛んで行く。
昼は光溢れる暖かな場所だけど、今は夜の闇もあり冷たくて。
何だか、怖い。
慣れない夜道で何度かつまずきそうになりながら、リンクは最後尾を走った。
すぐ前をルーク。先頭はロイドと妖精ナビィがほぼ並んで走る。
速い
2人があちこち旅をしたという話は聞いていたけれど、聞くだけではどういう事かよく実感できなかった。
2人の背を見ながら走っていて感じる。何か漠然としたモノ。
それは何なのか分からないけれど。
デクの樹サマの広場へ続く小道に差し掛かったその時。
先を行く2人が過ぎた後で突然、土が盛り上がる。
小さな芽が見る見るうちに大きくなり、茎の先に出来た赤い葉脈の浮き出た、
ドス青いつぼみが生えたと思ったら、そのつぼみがバックリと割れた。
割れた部分から覗かせる真っ赤な舌。よだれを垂らし、口のようににたりと笑ったように見えた次には、
茎をしならせまるで獣のように歯をガチガチ鳴らして襲ってくる。
「
ッ!?」
少し2人から遅れていた為に、すんでのところで後退する事が出来たのは幸いだっただろうか。
しかしほっとしたのもつかの間、来た道を塞ぐように同じのが二本。
「リンク!」
気付いた2人と一匹が振り返った。
その声にはっと正気に返ると、剣を抜き放ち、前にいる植物のモンスターに横一閃。
茎の根元からざっくり斬られたそれは、あっけなく地に倒れた。
後ろの奴は、と振り返った時には既にロイドとルークが倒した後で、ほっと一息つく。だが
「なんだよ今の…」
頭上から別の声がふって来た。
見上げればそこには一匹の妖精。その灯りに照らされて、木の上にミドが立っているのが見えた。
「
ミド!オマエ、どうして・・・」
「マツリの後、ホーノーした盾を見ているのはおいらの役目だから」
そう言って木の上から降りて来た。
「毎年こうやって見張ってんだ。それより、
今の何なんだよ!」
あんなモンスター見た事無い。
「おいら、さっきまでそこにいたんだぞ。誰か来たから脅かしてやろうと思って木の上に登ってたらこんな…ッ」
みるみる青ざめて行く。木の上に移動していなければ、襲われていたのはミドだ。無理もない。
「ここに、今みたいな魔物が出た事は、無いのか?」
ロイドがミドに問う。
ミドが首を縦に振って肯定した。
「やっぱりデクの樹サマの魔力が弱くなってるヨ」
震えるナビィの声。
「こんなところでモンスターが出るなんて、普段なら考えられない。速く、急ごう!リンク」
「待て、なんだよデクの樹サマの魔力が弱くなってるって!だめだぞ、朝までデクの樹サマの広場に入るの禁止!!」
デクの樹サマ広場へ続く道の先を塞ぐように両手を広げて、ミドが3人の前に立ちふさがる。
「
一刻を争うんだ!」
ミドの両肩に手を置いて揺さぶるようにルーク。
「走りながら話すから、
頼む、通してくれ!」
「たとえデクの樹サマに何かあったとしても
」
ルークの腕をふりほどきながらミドが叫ぶ
「
おまえらよそ者を、なおさら通す訳に行かないじゃんか!」
「
今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ!」
負けじとルークも声を張り上げた。
「
力を合わせて何とかしねーと
取り返しがつかなくなってからじゃ遅いんだ!!」
ビクッ、とミドの肩が揺れた。
「ミド、お願いだ」
そう言ったのはリンク。
睨み合うリンクとミド、そして
「・・・ワケ、話せよな?」
数瞬の後、ようやくミドの両腕がおろされた。
ほう、とその場の空気が和らぐ。
「
ああ!」
リンクが頷いた。
「急ぐぞ!」
ロイドの声。
2人になった妖精の灯りを頼りに
一行は再び夜道を駆け出した。
風もざわめく 深夜の森
闇の帳が降りてくる
はやく
はやく
急ぐ心にせかされて
生きたヒカリの 道標
十六夜の森 駆け抜けろ
闇の帳が降りぬよう
雲を斬り裂く 光となれ