妖精と即興楽曲<トッカータ>
誰もが寝静まる真夜中の森を
白い灯りが飛んで行く
灯りからは
大小あわせて二対の薄羽
ヒカリの粉を跡に引きながら
はやく
はやく
頭をめぐる
その言葉にかき立てられて
目指すは、一点
この森唯一の
「ヘクシッ」
夜の闇に、くしゃみの音
「っ〜〜?」
奇しくも最初に気付いたのは朱い髪の客人だった。
急に冷え込んだ森。
眠りが浅いのは何処に来ても健在らしいとか言うあさってな思考はともあれ、夜だというのに妙に明るいことに首を傾げる。
火をつけることはこの村では禁止の筈。
いや、それ以前に『火』というにはちょっと違う感じのような
「ねぇ!起きてよリンク!」
灯りだと思っていたモノが突然しゃべり出した。
うわっというこどもの悲鳴と、その声に驚いた少女の悲鳴。互いに飛び退く。
「
ンなななななッ!?」
ルークは動揺しすぎだ。
「んーー どうしたんだ?」
その声を聞きつけたのか、ロイドも起き出した。
目を開けて飛び込んで来たのは一点を指差しおののくルークの姿と、
その指の先にいるこの村に来てよく見かけるようになったヒカリの珠
もとい、妖精。
「ああーーっ もう!お客サマは目を覚ましてくれたのに肝心のリンクが起きなきゃ意味ないよー!」
リンクのネボスケー!!
そう叫びながらその妖精は上下に激しく飛び回った。
真夜中に白いヒカリがぶんぶんと
目がちかちかする・・・
「なんか事情はわかんねーけど、要はリンクを起こせばいいんだよな?」
ロイドの言葉で妖精が飛び回るのを止めた。
あ、なんか「起こしてくれるの?」って感じの表情が見えたっぽい。
この間にルークがリンクの頬をぺちぺち叩いて起こす。
「リンク、リンク!起きろ、なんか火の玉がいるぞ」
何気に失礼じゃないかその台詞。
ロイドの内心でのツッコミをよそに、リンクのぐずる声。
ようやく反応があったようだ。
「もうあさ・・・?」
目をこすりながらもぞもぞと体を起こす。ぼんやりと焦点が合った先には、念願の姿。
「妖精だ!!」
さっきまでの眠気は何処へやら、起き抜けから顔がほころぶ。
そんな感動の対面もつかの間
「もう!のんきな事言ってないでよ!早くしないと
デクの樹サマが死んじゃうよ!!」
最後は涙ながらに。
3人がそれぞれ表情を変えるのと
「「「どういう事だよそれ!」」」
その知らせを持って来た妖精を問いつめる声は、ほぼ同時だった。