3 草笛と円舞曲<ワルツ> - 7,邂逅

一方こちらは王宮廊下。広い廊下を、がしゃがしゃと鎧を鳴らして集まった兵士たちが数名、顔を付き合わせていた。


「おい、そっちはいたか?」

兵士のひとりが聞くと、他の兵士たちはゆるゆると首を横に振った。

「いや、いない。見失った」

苦虫を噛み潰したように悔しがる兵士。

「く、なかなかやるな。こどもなのが惜しいくらいだ」

「言ってる場合か!こんな事態、インパ様に何と申したらよいか・・・」

ひとりが頭に手をやってうなだれる。


「とにかく捜そう!王や姫に何かあってからでは遅いのだからな!」

兵たちがその場を立ち去ってからしばらくして、ふわりと、白いコートをなびかせた小さな影が舞い降りてきた。夕焼け色の朱い髪の少年     ルークだ。兵士から逃れる為、天井に近いところに潜んでいたらしい。

「何とか撒いたみてーだな」

ホッと息をつく。まさか隠れ上手がこんなところでも役に立つとは思わなかった。

だいぶ人も薄れて来てるってことはここに王族はいねー、よな・・・


窓から外を見れば、ここは城の上階部分らしい。だが、さっきから人が疎らなのを見ると、この辺りには重要なものは無さそうだ。ゼルダ姫を見つけるなら、もっと人の多いところに行かなければならないだろう。


けど警備の多いところに自分から進んで行くってのもバカみてーだし。でももこのままじゃあ目的も果たせねーよな。その前にロイドとリンクに合流しねーと     あーもーめんどくせーー!

心の中で独り言ち、がしがしと頭を掻く。

「こう言うとき、邸が広いってのは不便なモンだよな」

ルークはぶつぶつと呟きながら、ハァ、とため息をついた。


コン、 コン


ふと、ガラスを叩く音が聞こえて、ルークは窓の方へ目を向けた。窓の外には、見覚えのある鳶色の髪の少年が、ひらひらと手を振っていた。


「ロイド!?」

あわてて窓を開けると、するりとロイドが入ってきた。

「よぅ、やっぱりこっちにいたんだな」

朗らかに笑ってロイドが再会を喜ぶ。


「お前、なんで外にいたんだよ!?」

「追いかけられてたら丁度開いてる窓を見つけてさ。それで飛び降りたフリして窓の上に張り付いたんだ。皆俺が飛び降りたと思って慌てて行っちまったぜ?     けど、その後窓閉められちまって中に入れなくなったからあせった」


ロイド曰く、とりあえず、壁づたいにいろいろ移動して、開いてる窓が無いか探して回っていた、ということらしかった。そうしているうちにルークがいるのを見つけて、声をかけたとも。


「そ、そか・・・」

つーかここケッコー高い位置なんだけど。すげーなお前。

「リンクとナビィは?いないのか?」

ロイドがきょろきょろとあたりを見回す。

「おれもあれから見てねーよ」

参ったというように肩をすくめてみせる。


「そっか・・・ 王様が今いるって場所は聞いたんだけどな」

「     !? マジかよ!?」

同時刻。リンクのいる物置。


ナビィを見送ったあと、リンクは物音を立てないように部屋の中を移動した。誰か入って来るようなことがあったときの為に、隠れられる場所を探す。

手近な箱に入れないか開けてみようとするが、蓋は頑丈でびくともしない。瓶の中も物でいっぱいだし、高いところ、となると手すら届きそうもない。いよいよどうしようかと首をひねっていると     


 ごと、 がたん・・・


小さな音に気がついた。とっさに入り口や窓の方を見るが、特に変わったようには見えない。

「気のせい     」


「だれ・・・!?」


背後からの声に、心臓がどきりとはねる。

見つかった・・・!?

おそるおそる振り返るリンク。そして、言葉を失った。

「どうやって、こんなところまで     いえ、それよりも・・・」


暗がりに差す一条のヒカリに照らされて

彼女は いた。



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