一方こちらは王宮廊下。広い廊下を、がしゃがしゃと鎧を鳴らして集まった兵士たちが数名、顔を付き合わせていた。
「おい、そっちはいたか?」
兵士のひとりが聞くと、他の兵士たちはゆるゆると首を横に振った。
「いや、いない。見失った」
苦虫を噛み潰したように悔しがる兵士。
「く、なかなかやるな。こどもなのが惜しいくらいだ」
「言ってる場合か!こんな事態、インパ様に何と申したらよいか・・・」
ひとりが頭に手をやってうなだれる。
「とにかく捜そう!王や姫に何かあってからでは遅いのだからな!」
兵たちがその場を立ち去ってからしばらくして、ふわりと、白いコートをなびかせた小さな影が舞い降りてきた。夕焼け色の朱い髪の少年
ルークだ。兵士から逃れる為、天井に近いところに潜んでいたらしい。
「何とか撒いたみてーだな」
ホッと息をつく。まさか隠れ上手がこんなところでも役に立つとは思わなかった。
だいぶ人も薄れて来てるってことはここに王族はいねー、よな・・・
窓から外を見れば、ここは城の上階部分らしい。だが、さっきから人が疎らなのを見ると、この辺りには重要なものは無さそうだ。ゼルダ姫を見つけるなら、もっと人の多いところに行かなければならないだろう。
けど警備の多いところに自分から進んで行くってのもバカみてーだし。でももこのままじゃあ目的も果たせねーよな。その前にロイドとリンクに合流しねーと
あーもーめんどくせーー!
心の中で独り言ち、がしがしと頭を掻く。
「こう言うとき、邸が広いってのは不便なモンだよな」
ルークはぶつぶつと呟きながら、ハァ、とため息をついた。
コン、 コン
ふと、ガラスを叩く音が聞こえて、ルークは窓の方へ目を向けた。窓の外には、見覚えのある鳶色の髪の少年が、ひらひらと手を振っていた。
「
ロイド!?」
あわてて窓を開けると、するりとロイドが入ってきた。
「よぅ、やっぱりこっちにいたんだな」
朗らかに笑ってロイドが再会を喜ぶ。
「
お前、なんで外にいたんだよ!?」
「追いかけられてたら丁度開いてる窓を見つけてさ。それで飛び降りたフリして窓の上に張り付いたんだ。皆俺が飛び降りたと思って慌てて行っちまったぜ?
けど、その後窓閉められちまって中に入れなくなったからあせった」
ロイド曰く、とりあえず、壁づたいにいろいろ移動して、開いてる窓が無いか探して回っていた、ということらしかった。そうしているうちにルークがいるのを見つけて、声をかけたとも。
「そ、そか・・・」
つーかここケッコー高い位置なんだけど。すげーなお前。
「リンクとナビィは?いないのか?」
ロイドがきょろきょろとあたりを見回す。
「おれもあれから見てねーよ」
参ったというように肩をすくめてみせる。
「そっか・・・ 王様が今いるって場所は聞いたんだけどな」
「
!? マジかよ!?」
同時刻。リンクのいる物置。
ナビィを見送ったあと、リンクは物音を立てないように部屋の中を移動した。誰か入って来るようなことがあったときの為に、隠れられる場所を探す。
手近な箱に入れないか開けてみようとするが、蓋は頑丈でびくともしない。瓶の中も物でいっぱいだし、高いところ、となると手すら届きそうもない。いよいよどうしようかと首をひねっていると
ごと、 がたん・・・
小さな音に気がついた。とっさに入り口や窓の方を見るが、特に変わったようには見えない。
「気のせい
」
「
だれ・・・!?」
背後からの声に、心臓がどきりとはねる。
見つかった・・・!?
おそるおそる振り返るリンク。そして、言葉を失った。
「どうやって、こんなところまで
いえ、それよりも・・・」
暗がりに差す一条のヒカリに照らされて
彼女は いた。