「
!? 危ない!」
そう叫んだのはロイド。
サリアの、ちょうど背後の茂みから飛びかかる獣が二匹。
それは、刹那の出来事だった。
ザザンッッ!!!
ふたつの軌跡が、二匹の獣を薙いだ。
右は氷と炎の刃の剣を持つロイド。
左は銀に輝く刃の剣を持つルーク。
「す、すげぇ・・・」
ミドが、思わず感歎の声を上げた、その後ろに光る、紅い目
「
まずい、ミド!逃げろ!」
ロイドの声とともに、茂みからもう一匹の獣。
「ヤバイ!まにあわ・・・」
ザン!
ドオッと倒れる獣。
緑の風が、吹いた。
そこには、デクの樹サマから賜った剣を持ったコキリ族の少年
リンクがいた。
「大丈夫か、ミド!」
ミドは、こくんと頷いた。
「リンク、すごい…!」
「すげー!なあなあ、お前、前にも剣扱った事あんのか?」
剣もしまわぬまま、興奮した様子でルークが駆け寄って来た。
「い、いや、ないよ。」
「それにしちゃあ結構強いよな」
さっきの剣舞といい、結構なお手前。
二本の剣を既に納めた状態で、ロイドが周りを伺いながら歩み寄る。
「ああ、リンク、お前剣術習った方がいいって!ゼッテー強くなれっからさ!!」
剣を振り回すのはちょっと危ないだろ。
「それにしても2人とも、不思議な形の剣だなー。『ソト』にはそんなのがたくさんあるのか?」
「あーいや、おれのはローレライの鍵って言って…」
あああぁぁぁーーー!!?
自分の持つ不思議な形をした剣を見、ガクガクと震え出したルーク。心なしか青ざめている。
「ど、どうしたんだ?」
「宝珠がない…」
「ホウジュ?」
「ああ、ここにはめ込んであった筈のものなんだけど」
ルークはそう言って剣の柄の部分を指した。確かに何かをはめ込む事ができるようになっているようだ。
ヤベーなーどこで落としたんだろリンクの家ならすぐ見つかると思うけど
この世界にやってくる途中でおとしたとかだったらどうすりゃいいんだ心なしか剣も縮んでるみてーだし
ローレライが何とか宝珠を見つけてくれればいいけどあの意識集合体じゃイマイチ信用ならネーッ
つーかやっぱ自力で何とか探さなきゃなんねーのかなーてかどこをどう探したらいいのか手がかりもねーのにわかるかっつーの
ルークが髪をくしゃくしゃかき回しながら、わりと心の中でブツブツ言っている間に、悲鳴はもうひとつ。
「今度はロイドか」
「
形が変わってる!!!」
嘘だろ…親父と父さんからもらった大事な剣なのに
「本当はもっと大きくてキラキラしてる筈なんだ」
「大丈夫!そのままでも十分キラキラしててすっごくキレイだよ!ね、ミド?」
「第一オマエら、それ以上大きな剣だとコキリサイズじゃ使えねーだろ」
知らぬが仏のトドメの一撃。ルークが地面に突っ伏す。
「う"う"…こっちの世界に落っこちてきてから、ただでさえ体が縮んでてショックなのに、その上剣まで縮んでるなんて・・・」
「え、縮んでって ルークもか!?」
「当たり前じゃん、おれ、もとの世界じゃ一応17って事になってんだからな!」
本当は7歳だけどこんなのぜってー納得できネー!
「知るかッてゆうか、ルークって同い年だったのかよ」
てっきり見たまんまの歳(10歳)だと思ってた。
ロイド君ビミョーに当たってる。
「じゃあ2人ともオレよりちょうど7つ年上か〜」
「
リンク!」
リンクの朗らかな声にミドの声が重なる。
「…なんだよミド、どうしたんだ?」
「トシなんか、数えたってイミねーだろ」
「どうして?」
「なんでってオマエ… だって」
「もーっ!暗いハナシしないの!」
サリアが頬を膨らませてミドの前にずいと立ちふさがる。
「助けてもらったんだから、ほらちゃんとお礼!
ありがとう、3人とも!」
最後は3人に向かってのセリフ。
「いや、2人とも、無事で良かったよ」
「だな」
ちょっとひやっとしたけど。
「リ、リンク」
ミドの小さな声。
いつもならブツブツイヤミをぶつけて来るところだけど
あれ?
ガラでもない、まさか
「
次はゼッタイ負けないからなッ!」
キッと顔を上げたと思えば、ミドはリンクに指を突きつけ叫んだ(人に指を指したら
いけないってデクの樹サマに言われてるだろ)。
というか、何のハナシだよ。
まぁ、これがミドだけどさ。
「おまえ素直じゃねーなぁー」ってルークがからかってミドの顔がみるみる真っ赤になる。
「
そうだ!」
前触れもなく、パンと手が叩かれる音。驚いてそっちを見やればそこにはサリアの満面の笑み。
「サリア、いいこと思いついちゃった!」
その視線の先にはロイドとルーク、そしてリンク。
戸惑う3人が同時に首をかしげた。
翌日のステージにて。
サリアのオカリナに合わせて踊ったのはリンクだけでなく、客人であるハズのロイドとルークも一緒だったという。
そして意外な事に(知っている者がいれば言うまでもないだろうが)、一番人気はロイドの曲芸剣舞で。
祭が終わった後もせがまれ、ミドがヤキモチを妬いたのは余談。