見えない壁の向こうからもれてくる
淡く青みがかった光の中
あの天井の上に
細い道があるのを知ったのは
いつのことだっただろうか...
町の皆と 離ればなれになって
この小さな部屋で独りになって
自然と音に敏感になった
例えば遠くの木々の音
例えば遠くの鳥の音
例えば遠くの海の音
風が運んでくる勇気の歌を
ずっとずっと きいていたい...
でも
そんな歌が響くのは
ちっともなくて
いつもは人の悲痛な声
いつもは人の怖い声
そして時々
光という名の闇の声...
風が運んでくる絶望の歌が
信じるコトを忘れさせた
『女神様』に
『天使様』
そんなものは無いと知ったのは
いつのことだっただろうか...
今日は変な音がする
“キカイ”の音がずーっと響く
あわただしい話し声
あわただしい足の音
その中に
低くて微かな人の声
低くて微かな布の音
あの天井の上に
誰か いる...
ああ...
このときほど
“信じたい”と思ったのは
いつ以来だろうか...